【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「高梨さん? もしかして、真澄とうまくいってない?」
「え? いや、そんなことないです。たぶん、順調かと……」
昨日のことを思い出し、照れから語尾が小さくなってしまう。
「たぶん? ははっ、なんだよそれ。でも君の顔を見てる限り、順調そうだね」
いきなり顔を覗き込まれて、慌てて身を引く。
「もう先生! わたしをからかってます?」
人の顔を見て『順調』なんて、そうとしか考えられない。それとも、順調の二文字が顔のどこかに浮かび上がってきてるとか──って、そんなことあるわけない。
真澄さんと同期で親友。似た者同士とでも言うべきか。
「まあアイツもいろいろ大変そうだけど、高梨さんの存在が癒しになってると思うからよろしくね。さっきも上に呼び出されてたし……」
「え? 上、ですか?」
上って何? 旧病棟の上って、何があったっけ?
首を傾げ後ろを振り返り、そばにいた乙葉さんを窺う。が、乙葉さんも『なんのこと?』と言うように首を横に振った。
「あぁ~ふたりとも、そんなに深い意味はないから。上っていうのは医局のこと。気にしない気にしない。じゃ、またね」
わたしも乙葉さんも何も言っていないのに、田所先生はそう早口で捲したてると、あっという間に姿を消してしまった。