【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし

「参ってるって感じ?」

意地悪く言う田所先生を睨みつける。

「先生、嫌なこと言いますね」
「そうかな。アイツ、真澄との連絡手段を切って、勝手に逃げ出したのは君だろ?」

いつも穏やかな話す方をする田所先生の、棘のある言い方に驚く。顔は笑っているのに、目の奥は冷ややかだ。真澄さんから逃げたわたしを迫るつもりなのかもしれないが、わたしだって負ける訳にはいかない。

「何が……言いたいん、ですか?」

田所先生に強気で挑もうと思っても、彼の眼力に負けそうで声が震える。

でも田所先生はそんなわたしを見て、フッと笑い肩を落とした。

「悪い。高梨さんを責めるつもりで来たわけじゃない。そんな顔しないで」
「そ、そんな顔って……」

田所先生から、慌てて目線を外す。

「今にも泣き出しそうだ」

すっと伸びてきた田所先生の手が、わたしの目尻を拭う。その行為に、自分が泣くのを堪えていることに気づかされた。

泣きたくなんかないのに──。

田所先生の手を払いのけると、泣き顔を見られないように俯く。


< 203 / 258 >

この作品をシェア

pagetop