【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「参ってるって感じ?」
意地悪く言う田所先生を睨みつける。
「先生、嫌なこと言いますね」
「そうかな。アイツ、真澄との連絡手段を切って、勝手に逃げ出したのは君だろ?」
いつも穏やかな話す方をする田所先生の、棘のある言い方に驚く。顔は笑っているのに、目の奥は冷ややかだ。真澄さんから逃げたわたしを迫るつもりなのかもしれないが、わたしだって負ける訳にはいかない。
「何が……言いたいん、ですか?」
田所先生に強気で挑もうと思っても、彼の眼力に負けそうで声が震える。
でも田所先生はそんなわたしを見て、フッと笑い肩を落とした。
「悪い。高梨さんを責めるつもりで来たわけじゃない。そんな顔しないで」
「そ、そんな顔って……」
田所先生から、慌てて目線を外す。
「今にも泣き出しそうだ」
すっと伸びてきた田所先生の手が、わたしの目尻を拭う。その行為に、自分が泣くのを堪えていることに気づかされた。
泣きたくなんかないのに──。
田所先生の手を払いのけると、泣き顔を見られないように俯く。