【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし

わたしの中に、こんな自分がいるなんて初めて知った。

どうやら余裕がないのは、わたしも同じみたい……。

久しぶりにふたりだけの時間を過ごせる──それが思った以上に嬉しくて、左腕も上げると真澄さんの首に巻きつけた。

「どうした。珍しく積極的だな」

そういう真澄さんの顔は、なぜか笑っていて。前に『子供を子供扱いして何か悪いことでも?』と言われたことを思い出す。

「また子供だって言いたいんですか?」

こんな時なのに憎まれ口を叩くなんて、やっぱりまだ子供だ。でもだからって、笑うことないのに……。

不服な気持ちが顔に出て、唇を尖らしそっぽを向く。と──。

「恥ずかしがる蘭子も好きだけど、積極的な蘭子はいつも以上に魅力的だ」

わたしの耳元に顔を寄せた真澄さんが、甘言を囁くと耳朶を軽く噛んだ。

「あぁ……」

それだけのことで体が疼き、真澄さんをギュッと抱きしめてしまう。

「……ヤバいな。今日は優しくできないかもしれない」

わたしの首筋に顔を埋めた彼が、耐えられないというように甘いため息をつく。

嘘ばっかり──。

「今までに一回でも、優しくしてくれたことありました?」

わたしが『もう無理』と懇願しても、許してくれなかったくせに……。

お返しだと、真澄さんの脇腹に指を這わせる。その行為にビクッと反応した彼を見て、思わずクスッと笑ってしまう。

やってしまった──と思ったときには、すでに遅くて。

「そうだな。じゃあ今までどおり、抱き尽くす」

顔を上げニヤリをほくそ笑む真澄さんを見て、これでこそ本当の真澄さんだと思うわたしは、もう彼なしでは生きていけないんだと思い知らされる。


< 235 / 258 >

この作品をシェア

pagetop