【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし


眠れない。全くもって眠れない──

風呂に入った体は程よく熱を残していて眠気を誘っているはずなのに、背中側に感じる愛川先生の気配に眠ることができない。

どうして、こんな事になってしまったのか。

『俺と一緒に寝る』と愛川先生に言われたわたしは、もちろん何度も嫌だと抵抗を試みた。一緒に寝るぐらいなら玄関のほうがマシだという猛抗議も、「却下」の一言で片付けられて打つ手なし。何を言っても愛川先生は首を縦に振ることはなく、泣く泣く今のこの状況というわけだ。

ここの間取りは3LDKで寝室以外にふたつも部屋があるというのに、どうして布団の一組もないのか。そう文句を言ったら「俺がひとりで暮らすだけなのに、なんで布団がいる?」と逆にキレられてしまい、強制的にこの部屋へと押し込まれた。

キングサイズのベッドだから二人や三人一緒に寝られるだろうと愛川先生は言っていたが、男子学生の雑魚寝じゃあるまいし一緒にしてもらいたくない。

病院の宿直室に忍び込もうとしたけれど、あくまでも自分は女なのだ。

そう唱えてみたものの、心の中では愛川先生には届くはずもなく。

このまま睡魔に負けて眠ってしまったら、愛川先生に襲われてしまう……そう思うと体の震えが起きて、眠れなくなってしまうのだ。



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