【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
自分の中の愛川先生のイメージと言えば──

毎日可愛い女の子を連れて、お洒落なレストランで食事をする──が定番と思っていたのに、まさか外食が苦手だなんて。

勝手な思い込みは良くないなと、反省しきり。

人は見かけによらないものね。

なにげに愛川先生の料理をする姿を眺めていた。

「何だよ、そんな顔で見て。俺に惚れたとか?」

愛川先生の艶っぽい目と交わり、顔がポッと温かくなる。

「っ!? ほ、ほれるとか、何言ってるんですか!?」

やっぱり、からかわれている──そうわかっているのに、動揺して声が大きくなってしまった。

「ま、初日じゃ惚れないか」

愛川先生はニヤリと含みのある笑顔をみせたが、すぐに目線を鍋へと動かし料理を始めた。

なんなの、今の顔?

初日じゃ惚れない? それは、いつかはわたしが愛川先生に惚れるという前提あっての言葉なのだろうか。

冗談も休み休み言ってほしい。誰が好き好んで、愛川先生みたいな男を好きになるというのか。今日の愛川先生はいつもと違って感じるけれど、それとこれとは話が別。

何も言い返せず黙っていると、目の前のカウンターにシュッと何かが滑り込んできた。

「スマホ?」

黒のシンプルなそれを手に取り、愛川先生を見る。

「なんですか、これ?」
「俺のスマホ。そこに蘭子の連絡先入れといてよ」
「ど、どうして!?」
「どうしてって、そんなの当たり前だろ。一緒に暮らすのに連絡先知らないなんて、おかしくないか?」
「一緒に暮らす……」

何もそこを強調しなくてもと、愛川先生をチラッと盗み見た。



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