【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
愛川先生の目を見ると、キスされたときの甘い瞳を思い出して落ち着かなくなってしまう。それでも食欲に勝るものはなくて、用意された料理を全部平らげ手を合わせた。

「ごちそうさまでした。片付けは、わたしが」

立ち上がり、食べ終わった食器を重ねる。愛川先生の方の食器に手を伸ばすと、その手をやんわりと握られた。

「片付けは後でいい」

そのまま手を引かれ、リビングへと連れて行かれた。ちゃんと話してくださいと言ったのは自分の方なのに、唐突すぎて話を聞ける状態にない。これじゃあ形勢逆転どころか主客転倒、立場が逆転してしまう。

気持ちをしっかり持つのよ、蘭子!

そう意気込んで愛川先生に立ち向かおうとしたのに、隣りに座った彼から発せられた言葉に戦意をなくしてしまった。

「好きだ、蘭子」

まだ手は愛川先生に繋がれたまま。その手をギュッと握りしめ、切れ長の美しい目私に向けた。

そんな目で見ないで欲しい。強く持った心が、ポキッと折れてしまいそう……。

それでもなんとか歯を食いしばり、愛川先生を見返す。

「それはさっき聞きました。愛川先生は前からずっとと言ったけれど、そんなの信じられません! だって先生はわたしのこと、何も知らないじゃないですか」

それなのに、どうして簡単に好きだって言えるの?

愛川先生と顔を合わせるのは週に三日ほど、それもほとんどが挨拶だけ。たまに声を掛けられても“高梨さん”呼ばわりで、わたしに興味がないのは丸わかり。


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