【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
園枝さんも言っていた。『愛川先生は悪い人じゃないけど、女の子には見境ないところがあるから気をつけてよ』って。

浅はかだった。もっと慎重になるべきだった。もっと疑うべきだった!

「愛川先生はモテるんですから、わたしなんかで遊ばなくても……」

いろんな思いが渦巻いて、嫌味な言葉が出てしまう。

そんなわたしを見た愛川先生は溜息をつき、握っている手の力を緩めた。

「まあ、そう思われてもしょうがないか。でも蘭子のことは、何も知らないわけじゃない」
「どういう意味ですか?」

そんなこと信じられないと、疑いの目を向ける。

「診療棟のロビーから見える、朝の景色っていいよな」
「え……」

愛川先生は、まさかの言葉に驚くわたしをチラッと見て、そのまま話を続けた。

「夜勤明けや早く出勤した日はいつも、あの大きな窓から外の景色を眺めていた」

なんで……。

愛川先生はわたしが同じ場所で、景色を見ていることを知っていて話してる? じゃなければ、いきなりこんな話ができるわけない。

震えそうな体を抑え、愛川先生を見つめた。

「でもある日。俺の大切な場所を、誰かさんに取られてしまった」
「え? それって」

まさか……。

大きく目を見開くわたしに、愛川先生はコクリと頷いた。

「そう蘭子、君だ。最初は俺の特等席を奪うなんて、なんて奴なんだと思ったのは本当。でもすぐに、俺の気持ちは変わった」

愛川先生は微笑しながらそう言うと、わたしの髪を一束つかむ。それをふわりと耳に掛け、露になった頬をゆるりと撫でた。体に甘い痺れが走り、体の強張りが解けていく。



< 50 / 258 >

この作品をシェア

pagetop