【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「なぜか知りたい?」

魅惑的な瞳で見つめられ、それはまるで魔法のようにわたしを頷かせてしまう。

「蘭子が幸せそうな顔をしていたから。蘭子も俺と同じことを感じているんだとわかったからだ。それからの俺は、いつも君の姿を目で追うようになっていた」

そんなこと全然知らなかった。まさか愛川先生に見られていたなんて……。

愛川先生がどういう人なのか、まだ全然わからないけれど、きっと嘘はいってないと思う。診療棟のロビーからの景色は本当に素晴らしい。四季折々の風景は一日だって同じものを見せてはくれない。いつの頃からかそれが毎日の楽しみになって、それがわたしの活力となっていった。

愛川先生も同じだったってこと?

あそこから見る景色から元気をもらっている人が、もうひとりいた。それが愛川先生だったなんて……。

胸の奥から不思議な感情が湧き上がってくる。こんなこと初めてで、自分の体が自分のものじゃないみたいだ。

わたしを見つめながらゆっくりと近づいてくる愛川先生の顔が、数センチまで迫ってきた。それがどういうことなのかを悟った瞬間我に返り、驚いて思わず彼の胸に両手を当ててその体を押し止めた。

「愛川先生の話はわかりました。でもだからってキスの理由にはなりません。わたしの許可無くキスするなんて犯罪じゃ……」
「じゃあ許可してよ、蘭子」

愛川先生の顔から、微笑は消えている。



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