【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
こういうとき、なんて答えるべきなの？

神様助けて！

ひとり戸惑うわたしの耳に、聞き慣れた声が届く。

「蘭子ちゃん、ちょっといい？」

その声に振り向くと、厚いファイルを抱えた総合受付主任の時田園枝さん（ときたそのえ）が立っていた。

「そろそろ朝礼が始まるので、失礼します」
「え？　あ、ちょっと、高梨さん……」

愛川先生はまだ何か言いたそうな仕草をしたが、わたしはちょこんと頭を下げると、助かったと言わんばかりにその場を離れた。

園枝さん、タイミング良すぎ！

愛川先生には見えないように小さくガッツポーズをし、ファイルを広げる園枝さんのところへと向かった。

「愛川先生と何かあったの？」
「え？　なんで、そう思うんですか？」

園枝さんからの突然の言葉に、頭の中にはてなマークが浮かぶ。

「蘭子ちゃん、困った顔してたから気になって」

ああ、そういうこと。だから私を呼んだのね。

さすがは園枝さんだと小さく頷く。

短大を卒業後、この病院に就職が決まっていたわたしは母親を亡くし悲しみに暮れる中、病院の近くに引っ越しをした。母親が居なくなった寂しさに加え、ひとりでの慣れない生活が重なり、厳しい現実はわたしから笑顔を奪った。

そんな時、親身になってわたしを助けてくれたのが園枝さんだ。優しく、時には厳しく接してくれる園枝さんのおかげで、わたしは日に日に元気を取り戻していった。

園枝さんは今でも何かと気にかけてくれる、わたしにとって第二の母のような存在だ。


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