【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
嫌よ嫌よも好きのうち
真澄さんのスタイリッシュな黒のスポーツカーで連れて行かれたのは、その車にはそぐわない古びた定食屋。勝手に思っていた真澄さんのイメージとは違っていて、少し拍子抜けだ。
だからといって嫌なわけではない。わたしとしては嬉しいぐらいで、気も使わなくていいし有難いけれど。
「どうした?」
店の中に入り席につくと、わたしの視線に気づいた真澄さんが怪訝な顔をした。
「真澄さんは、もっと洒落た店で食事する人だと思ってました」
「蘭子は俺のこと、どんな人間だと思ってるわけ?」
肩肘ついてかったるそうにそう聞かれ、少し考える。
「そうですねぇ。綺麗な女性を連れて、お洒落な街でウインドーショッピングして。人気のお店で食事してから、ホ
テルの最上階のラウンジで綺麗な夜景を見ながら、美味しいワインをふたりで傾ける? とか」
「なんだよ、それ。まあそういうのも悪くはないが、それは特別な人と過ごすプランだろ」
世間一般ならそうなんだろうが、病院での真澄さんを見ているとそんなプランが浮かんできてしまった。
でもそういうことなら、今晩は特別じゃない──ということ?
まあ別に、どっちでもいいけど。でもこのチクリと感じる、胸の痛みは何なんだろう。
胸元を押さえると、浅く息を吐いた。