【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「田所先生、これには深いわけがありまして」
「うん、知ってる。住んでいたアパートが火事にあって、これを機に一緒に住むことにしたんでしょ?」
「これを機にって、どういうことですか?」
「真澄から高梨さんと付き合ってるって聞いたけど、違うの?」
「ま・す・み・さんっ!!」
店員や他のお客さんがいることも忘れ、大声を出してしまったわたしを見て、真澄さんは少し驚いた顔を見せた。
「田所先生に、いい加減なこと言わないでください!」
「先手必勝だ。どうせ近い未来にそうなるんだから、いい加減でもなんでもない。それに」
「そ、それに……」
真澄さんはそう言って、ニヤリと片方の口角を上げた。この顔を見ると、嫌な予感しかしない。助けを求めるように田所先生を見たが、彼は両方の手のひらを上に上げ、お手上げと肩を竦めた。
観念しろと真澄さんの瞳がわたしを捉える。と、ゆっくりと手を伸ばし、擦るように頬に触れた。
「蘭子はもう、俺のことが好きだろ?」
それはまるで呪文のようにわたしの脳を麻痺させて、思考を鈍らせていく。もしかして好きなのかも──そう思ってしまうから不思議だ。
ホワンと真澄さんを見つめ、それを肯定するように首を縦に振ろうとした瞬間。
田所先生がゴホンとわざとらしい咳をしてみせ、一瞬で呪縛が解かれた。自分を取り戻したわたしは頬に触れている真澄さんの手を払いのけると、彼の顔を睨みつけた。