【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
何を言っているのっ!
真澄さんは罠を仕掛けてわたしを仕留めたつもりかもしれないが、そうは問屋がおろさない。
「好きじゃないし! いやもう、どちらかと言えば嫌いだし!! 勝手なこと言わないで!」
これが店内じゃなかったら手にしているコップの水を、真澄さんめがけてぶちまけてやるのに──そんな勢いで言い放ち、なんとかその気持ちを抑えて呼吸を整える。
「まあまあ高梨さん、ちょっと落ち着いて」
これが落ち着いていられるか!
田所先生は関係ないのに、つい睨みを利かせてしまう。
「参ったなぁ~。おい真澄、冷静なお前らしくないんじゃないか?」
「何を言ってる、俺はいつでも冷静だ。先手必勝の何が悪い。蘭子のことが誰よりも好きなだけだろ」
はい。勝手なことばかりで、意味わかりません。田所先生も同じ気持ちだったらしく、呆れたように肩を落とすと苦笑してみせた。
「はいはい、真澄の気持ちはわかったよ。まあそういうことなんで、ここはひとつ高梨さん。こんなやつだけど、真澄のことよろしくね」
そんな肩をポンポンとされても、よろしくなんてしたくありません! じゃあ、わたしの気持ちは? どうしてわたしだけがおみくじの凶を引いたみたいに、こんな厄介な真澄さんと付き合わないといけないのよ。
──そうは思ってはいても、真澄さんのところで暮らすことは紛れもない事実で。
目の前で生姜焼きを美味しそうに食べている真澄さんを見て、大きく溜息をついた。