【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
わたしは焼きそば、乙葉さんは日替わり定食を頼むと、奥の席を陣取った。
「さあ蘭子、寝不足の理由を話してもらおうか」
乙葉さんにさながら刑事のような鋭い目で見つめられ、わたしは身を縮こませた。
「そんな目で見ないでくださいよ。ホント、男なんてできてないですから」
そうだ、真澄さんはまだ彼氏じゃない。まだ、と言うのもおかしいが、今の所わたしにはそのつもりがなかった。
「わかったから。寝床を変えたっていうのは、どういうことよ」
「それは……」
このままはぐらかす力量もないし、他にうまい言い訳も浮かばない。仕方なく、三日前の火事の出来事から話し始めた。
「そんなことがあったなら、なんでわたしに連絡してこなかったのよ、水臭い。で今はどこで暮らしてるの?」
わたしの話を聞いた乙葉さんは少し興奮気味にそう言うと、グッと身を近づけた。
「乙葉さん、顔近いですって! 話します、話しますから少し落ち着いてください!」
彼女の肩を押し元の位置へ座らせると、乾いた喉を潤わすためにコップの水を飲んだ。
「いいですか、乙葉さん。ここからの話は絶対に他言無用です。もし誰かに話したら、いくら乙葉さんでも許しませんから」
「うん、わかった。女と女の約束ね」
そう言って差し出された小指に、自分の小指を絡ませる。乙葉さんのことだ、こんな小指の約束じゃ心許ないが、しないよりは幾らかマシだろう。
迷った挙句、重たい口を開いた。