【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「……わかりました」
仕方なく立ち上がると受診票を持って、重い足を引きずるように歯科口腔外科へと向かった。
歯科口腔外科は同じ棟の四階にある。エレベーターで四階まで上がると、何度も溜息をつきながら待合室の前で足を止めた。
「すみません、総合受付の高梨ですけど」
診察室の方に向かって声を掛けると、いくつもある診察スペースのひとつ、二番のカーテンが開く。中から少しふくよかな看護師さんが出てきた。
「はいはい、高梨さんね。時田さんから聞いてますよ。え~と、七番に入って待っててくださいね」
「七番。あ、あの、どの先生が診てくれるかわかりますか?」
「ええ、わかるわよ。愛川先生」
もしやと思っていたが、まさか真澄さんだなんて……。
「あなたラッキーね。愛川先生に診てもらえるなんて」
うふふ──と笑って、ふくよかな看護師さんは、また二番へと戻っていった。
アンラッキーだって言うの!
憂鬱な気持ちでトボトボと歩き、オープンスペースになっている診療室内の一番奥にあった、七番の診療室に入った。
まだ真澄さんはいない。
初めて入る口腔外科の診療室をキョロキョロと見回す。見たことがない器具を覗き込んでいると、後ろから聞こえたカーテンの開く音に振り返った。