【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「あ! もしかして、愛川先生に何かされたとか?」
「乙葉さん、声が大きい」
慌てて乙葉さんの口を手で覆うと、もう片方の手でシーッと人差し指を立ててみせた。同時に周りを確認してみたが、誰も聞いてなかったようでホッと胸をなでおろす。
「何かされたって、何されるっていうんですか?」
キスされそうになって、危なかったけど……。
流石にそうは言えず、あははと笑ってみせた。
「愛川先生じゃなかったの?」
「愛川先生でしたよ。でもさすがに病院内じゃ、愛川先生も手出しできないでしょ?」
彼なら所かまわず、いろいろしてくるだろうけれど……。
流石にそうも言えず、今度は苦笑してみせた。
「じゃあなんで、そんな微妙な顔してるのよ?」
微妙な顔って……。他の言い方はなかったのかと、心の中でボヤく。
「微妙な顔は生まれつきです。奥歯の痛みの原因は親知らずの炎症で、状態が良くないから来週の土曜日に抜歯することになって」
「だから、その顔なのね。蘭子のことが大好きな愛川先生だもの、治療だけで済むのかどうか」
乙葉さんは耳元でそう言うと、ニカッと笑顔を見せる。
「それ、どういう意味ですか?」
「やっだー! そんなこと、ここで言えるわけないじゃない!!」
そう言いながらわたしの背中をバシバシ叩く乙葉さんはかなり興奮していて、その声がロビーに響き渡った。