【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし

「乙葉さん! 園枝さんに怒られますよ!」

彼女の腕を引っ張りながら歩いていくとスタッフ専用のドアを開け、グイッと奥へ押し込んだ。

「いくら午前の診察が終わったからって、まだ患者さんはいるんですから」
「ごめん、ごめん。ちょっと想像しちゃってね」
「想像って何をですか?」
「ほら、恋愛小説なんかでよくあるじゃない。病院内で先生とイチャイチャ……むふふ」

乙葉さんがちょっと下品な笑い方をして、ピンときたわたしは彼女の頬をキュッと摘んでひねった。

「ひ、ひぃたい……」

乙葉さんの声にならない声に、ふっと笑いがこみ上げる。

「乙葉さん、現実に戻ってきてくださーい。ここは小説の中でもおとぎ話でもありませんよー」

摘んでいた指を離し、その頬を擦る。

「とにかく愛川先生のことは、誰にも内緒でお願いしますね。乙葉さん」

そう言ってもう一度念押しすると、乙葉さんはしゅんとして身を縮ませた。

「わかってるって。わたしも面倒事に巻き込まれるのはゴメンだし。だけど、困ったことがあったら、いつでも相談するのよ。わかった?」
「はい、ありがとうございます」

ふとランチの時、乙葉さんに言われた『持つべきものは、頼りになる先輩でしょ?』の言葉を思い出して、心の中が少し軽くなった。



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