【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「終わった」
保険確認や患者さんへの診療情報提供、駐車料金減額の処理をしたり電話や患者さんへの対応と、午後の忙しい時間も終わりが近づく。
時刻は午後の六時半。
今日は最後の患者さんの診療が長引いて残業になったが、この時間なら許容範囲。
デスクの上を片付け引き出しから小さなバッグを手に取ると、ロッカールームへと向かった。
「蘭子、お疲れ~」
先にロッカールームに来ていた乙葉さんは化粧も直し終え、素敵な女性へと変貌を遂げていた。事務服を着ていたときの乙葉さんとは別人のようだ。
「彼氏さんとデートですか?」
「もちろんでしょ。来週はもうクリスマスだよ。デートしなくてどうするの?」
その理論は全くわからないが、来週はクリスマスなのだと小さく溜息ついた。
「蘭子ちゃんは、なんで溜息なんかついてるのかな~」
頬をツンッと突かれる。
「なんでって……」
そんなこと聞くなんて、わかってるくせに乙葉さんは意地悪だ。
昨年までのクリスマスは、わたしにはなんの関係のないイベント。特に何をするわけでもなく、気が向いたときだけコンビニスイーツを買いテレビを見ながら過ごすだけ。
まあひとりなんだから、当たり前なんだけど……。
でも今年は少し事情が違う。