終わりは始まりか ~私達の場合~
私はきょろきょろしながら引っ張られていく。

「ここならゆっくり飲めますから。」

場所的にも穴場と思える雰囲気のお店。

入口も少しわかりにくい。

「あの会社に8年も通っていて、こんな近くにこんなお店があるなんて知らなかったわ。」

思わず私は微笑む。

とても内装が落ち着いている。

こじんまりとしているが、雰囲気は良い。

麻生くんの馴染の店らしく、ちょっとした合図だけで、グラスが出て来た。

「いつもそんな表情をしていればいいのに。」

カウンター席に座ると、麻生くんは私の顔を覗き込んでそう言った。

「仕事中の宮園さんはいつもきりっとしていて、それはそれで格好は良いんですけどね。」

私はさっきトイレで見た自分の顔を思い出す。

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