終わりは始まりか ~私達の場合~
「俺は本気だぞ。」

伊吹の腕に力が入る。

「伊吹、それは無理だっていつも言っているでしょう。」

なるべく伊吹を刺激しないように、私はゆっくりと丁寧に答える。

「じゃあ、あいつとなら良いのか。」

伊吹のそんな言葉に、私は笑いながら首を振る。

「それも無理だと思うわ。麻生くんは伊吹以上に若いのよ。そんな麻生くんが陽輝の事を引き受けられるわけがない。」

私は少し緩んだ伊吹の腕から、少し距離を取る。

「麻生くんには未来があるのよ。設計のセンスもあるし、どんどん仕事をしていくべきだわ。」

「美月、お前…。」

伊吹の表情が一瞬曇る。

「私は陽輝と生きていくの。それは伊吹にも麻生くんにも邪魔させない。」

私はドンと伊吹の胸を押しのけた。

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