終わりは始まりか ~私達の場合~
そんな事を言いながら、麻生くんはニヤリと笑う。

「どうかしらね。助かっているのは認めるけれど。」

私もニヤリと…、笑えただろうか。

「俺はここが好きです。」

麻生くんが満足気に笑う。

「美月さんのお父さんが居て、陽輝くんもいる。そしてお母さんもどこかに居るような気がする。」

私は静かに目を閉じた。

すると麻生くんは私をゆっくりと抱き寄せる。

「そして大好きな美月さんが居る。」

どうして麻生くんは私の欲しい言葉が分かるんだろう。

でも私は首を横に振る。

「自分のペースを戻しなさいよ。会社はあなたを必要としているわ。」

麻生くんは言わないけれど、私は会社からいつ戻って来るのかと催促が来ている事を知っている。

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