終わりは始まりか ~私達の場合~
そう言いながら、麻生くんは少し顔を赤くした。

「実は…、もうここへは来てはいけないんじゃないかと考えていました。でも…、帰ったその日から俺自身が寂しくて…。」

そして私に麻生くんは微笑んだ。

「すぐにでもここに戻って来たかった。だからそれを素直に実行しただけです。」

「麻生くん、さっ、入ってくれ。」

呆然と立っている私の代わりに、お父さんは麻生くんにそう声を掛けた。

麻生くんは陽輝を抱っこして、私のそばを通ろうとした時…。

「もちろん一番恋しかったのは美月さんです。」

そんな事を言いながら、私の頬に一瞬のキスをした。

私の驚いた表情を楽しそうに確認した麻生くんは、お父さんの後をついていく。

やられた…。

とっさにそう感じながら…。

自然に沸き起こるホッとした様なこの嬉しい気持ちにはウソはない。

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