終わりは始まりか ~私達の場合~
「お互いにそんな気はなかったのに…、佐藤さんは既婚者だったし…、あの時は二人ともおかしかったのよ。」

私は首を振りながら、苦笑いをするしかなかった。

「…一度だけ寝たわ。後にも先にもその時限り。」

「まるで俺の時みたいですね。」

麻生くんがふっと言葉を吐いた。

「どうも私はそういうだらしない女みたいね。」

私は投げやりに返事をする。

「だからあの時…、逃げ出したんですか?」

麻生くんは私の口の端を指でなぞる。

「ううん、あの時は佐藤さんの事は思い出さなかったわ。佐藤さんとの時は握手をして、潔く別れたのよ。」

そう、それは私の送別会で繰り返されたわけだけれど…。

「それなら、俺に対してはどうして?」

麻生くんの意地悪そうな表情が手に取るように感じる。

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