終わりは始まりか ~私達の場合~
伊吹は親指で私の目の涙をぬぐった。

「そうだね。麻生くんが居ない分、今日の仕事が大変だわ。」

もうすっかり麻生くんをアテにしてしまっている自分がいる。

伊吹は私の頬から手を放すと、つとめていつものようにふるまう。

「そう言えば、ここの部分なんだけど、収納がちゃんと納まるのか?」

私が収納の空間をたくさん取ろうとして、無理をした部分。

「計算上は出来ると思うんだよね。後は伊吹の腕次第かな。」

私はそう言いながら、やっとの思いで伊吹に意地悪な笑顔を向ける。

「そうだな、どんな形であれ、美月は笑って現場にいる方が良い。」

前みたいにぐいぐいと迫って来ないのは、陽輝に対する扱いと同じなんだろうか。

「ありがとう、伊吹。」

「俺はいつでもお前のそばに居る。」

いつもの言葉が、今日はとてつもなく頼もしく感じる。

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