終わりは始まりか ~私達の場合~
「あいつが居ないのなら、今日の夕飯には行かない方が良いか?」

珍しくそんな気を遣う伊吹に、私は思わず吹き出してしまった。

「伊吹らしくないな。いつも通りで良いのよ。陽輝も楽しみにしている。」

「そうだな。二人も行かないとかえって陽輝が寂しがるか。」

二人で声を出して笑った。

「ありがとう、伊吹。でも麻生くんの事で、気を回さなくてもいいのよ。私にとって、伊吹も麻生くんも大事な仕事仲間なんだから。」

伊吹は少し寂しそうな顔をする。

「俺が小さい頃から美月と築いて来た関係を、あいつはあっさりと作ってしまったんだな。」

「私も不思議だよ。だって私達、ちゃんと話したのは私の会社の送別会…、しかもそれが終わってからだったのよ。麻生くんは私の事を知っていたみたいだけど、私は麻生くんの顔を見た事があるかなって程度だったんだから。」

伊吹はもっと私に話せと合図する。

「それからだって、麻生くんからの現場の相談の電話を受けているだけで…。会ったのは2年後のお母さんのお葬式の日だったのよ。」

「あの時だな。」

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