終わりは始まりか ~私達の場合~
最期に送別会で握手したその場面がはっきりと思い出される。

「元気か?」

相変わらずぽつりぽつりと話す佐藤さんに私の表情も緩む。

「はい、こっちでも仕事は頑張っていますよ。ところで何か用事でもありましたか?」

私の明るい声に反して、佐藤さんは少し話しづらそうだ。

「実は…、麻生の事なんだけど。」

佐藤さんからその名前を聞くとは思わなかった。

その事に、私は動揺する。

「あいつさ、過労で倒れたんだ。」

「えっ?」

「その時に初めてあいつから聞いたんだけど、麻生はずっと週末にそっちの手伝いをしていたんだって?」

私が何も言えずにいると、佐藤さんが話を続けた。

「麻生は仕事も出来て、会社でもすごく期待されているんだ。そんな事もあって、こっちでもかなり激務だったんだ。」

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