終わりは始まりか ~私達の場合~
確かに私もその事は頭では分かっていたはずだった。

「麻生は…、どうも会社を辞めるつもりで、仕事を更に詰め込んでいたようなんだ。今思うと、あいつはいつ寝ていたんだろうと思うくらい会社に居た。」

私は目をつぶって、佐藤さんの言葉を受け止める。

「なあ、宮園。あいつを解放してやってくれないかな。」

「…そうですよね…。」

私はそうつぶやくしかなかった。

「私が麻生くんの厚意に甘えてしまったんです。もっと麻生くんの様子に気を配るべきでした。」

「そこは宮園らしくなかったな。会社では部下に対してはきつい事も言うけれど、そういう見極めは鋭かったのに。」

そうなのだ…、これは私の完全なる落ち度だ…。

「それで、今は麻生くんの体調は…。」

「ああ、一人暮らしで心配だったから、わざと一週間入院させた。その後しばらく自宅待機をさせて、もう普通に仕事をしているよ。」

佐藤さんの声のトーンが上がったような気がした。

< 146 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop