終わりは始まりか ～私達の場合～

「よく酒も飲みに行ったしな。」

そう、仕事帰りにヤケになって飲み明かした相手は佐藤さんだった。

「宮園がその気だったら、俺達結婚していたかもな。」

「ははは、それはないでしょう。」

昔話は楽しい思い出ばかりが誇張される。

「…俺は何度酒の席でお前の事を口説いたと思っているんだ？」

「えっ？」

私は佐藤さんの言葉に心当たりはない。

「…やっぱり気が付いていなかったんだな。」

「でも佐藤さんは他の人と結婚したじゃないですか。」

私は驚いた声を出す。

「その時近づいて来た嫁さんに優しくされてコロッといっちゃったからな。嫁さんに散々お前の事を愚痴った。」

私は全くそんな事も思いもせずに過ごしていたんだ。

「…だからあの時最後だと思って、お前を抱いた。俺の精一杯の愛情表現だったんだけどな。翌朝にあっさりと握手してさよならなんて…。」