終わりは始まりか ~私達の場合~
ましてはお父さんからしたら、その事が唯一の心配事なのかもしれない。

「お前が伊吹と結婚するのなら、この事務所を畳めばいい。そしてこの仕事を伊吹の工務店で引き継いでもらったら良い。」

お父さんがそんな事まで考えていた事に軽い戸惑いを感じる。

「親父さん。」

伊吹が私達の会話に入って来た。

「親父さんの気持ちは嬉しいんだけど、美月にはまだその準備が出来ていない。それなのに周りが急かすと、こいつはどんどん逃げてしまう。」

伊吹がこんな事を言うなんて。

私は振り返って、伊吹を見る。

「俺はこのままでいい。前にも言ったけど、俺はずっと美月と陽輝のそばから離れないから、それだけは安心してよ、親父さん。」

お父さんの表情が緩む。

「いつもと言っている事が違うわね。」

私は伊吹を見て笑う。

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