終わりは始まりか ~私達の場合~
あの時の様子が頭の中に浮かんで…。

あの日のように身体が火照る。

「もしもし、美月さん?」

麻生くんの声に私は我に返った。

「…思い出していたんでしょう?あの時の事を。」

心なしか色っぽく聞こえる麻生くんの声。

「悪趣味だわ。」

私は素っ気なくつぶやく。

「…すんなりと帰したくなかった、美月さんの事。」

麻生くんが起きる前にあそこを出て来たのは、やはり正解だったようだ。

「いえ、俺がもっと早く社内で美月さんに声を掛けるべきだったんです。」

静かに話す麻生くんの姿を私は想像する。

「だからこうやって時々連絡します。」

麻生くんはそう言い切った。

< 40 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop