終わりは始まりか ~私達の場合~
スマホの向こうではっと息を飲む声が聞こえる。

「美月さんにとっては、俺はそんな程度のモノなんですね。」

「そうね、この先わざわざ会う事はないと思うわ。」

私は少しきつい言葉を麻生くんに投げかける。

「どうしたんですか?何だか今日の美月さんは別人みたいです。」

ああ…、麻生くんにはすべて筒抜けね。

私は苦笑いをした。

「だってそうでしょう?もう相談を受けていた現場も順調だし、私は会社の人間でもないし。会うどころか、もう連絡だって取る必要もないじゃない。」

私は上手に麻生くんを突き放す事が出来ているだろうか。

麻生くんには未来がある。

私が思うに、麻生くんはこの業界でやっていける才能とセンスを十分に備えていると思う。

あとはがむしゃらに経験を積む事。

私みたいに年上の女にかまけている暇はないはず。

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