終わりは始まりか ~私達の場合~
「お母さんの事があるから大変なのも分かるが、そんなに家の事も仕事も自分で抱え込んでしまって大丈夫なのか?それに…。」

私は首を横に振って、伊吹の言葉を遮る。

「私は私の出来る事を精一杯やるだけよ。まあ、伊吹にもまた迷惑をかけてしまう事もあるかもしれないけど…。」

私は不安気な顔を隠さない。

「せっかくこっちに帰って来たんだ。俺に甘えたらいいだろう。俺とお前の仲なんだから。」

伊吹は軽く言ったが、表情は真剣だ。

「お前が就職でこの町を出て行った時の事を覚えているか?」

私は返事もせずに、目を伏せる。

私達は中学、高校と微妙な関係だった。

幼馴染という関係に、お互いが甘えてしまっていたのだろう。

一番近い距離に居ながら、それ以上は近づかない。

いや、お互いがその関係を壊したくなかったのだと、今なら思える。

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