終わりは始まりか ~私達の場合~
多分どこかのタイミングで何かが起こっていれば、きっと思いは通じ合っていただろう。

高校卒業後、私は大学に自宅から通い、伊吹はさっそく大工の見習いになった。

それでも結局私達の関係は変わらなかった。

相変わらず、一番近い距離に居たのに。

そして私が就職でこの町を離れるという時に伊吹は動いた。

「俺はずっと美月の事が好きだ。この気持ちは変わらない。だから…。」

私はこの時、首を横に振った。

もうここへ帰って来る事がないだろうと思っていたからだ。

遅すぎる伊吹の告白に、諦めてしまった自分の気持ちは取り戻せなかった。

それにお互いが進む道が決まった後だ。

「私も伊吹が好きだった。でももうこのまま幼馴染のままで居よう。」

ぎこちないキスを伊吹が私の額に落として、そのまま別れた。

涙がぽろぽろと止まらなかったことを今でも思い出す。

「俺の気持ちは変わっていないぞ。」

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