終わりは始まりか ~私達の場合~
私は苦笑いをしながら、もう一度お父さんを見る。

あんな感じのお父さんが仕事をすぐに再開出来るとは思えない。

でも仕事上、そんなに休業しているわけにはいかない。

「分かっていたんだけどね…。でもお母さんも頑張ってくれたから。」

私は目に浮かびそうになった涙をこらえる。

「そうだな。お前が一番必要とした時には、結局はそばに居てくれたんだもんな。」

いつも言いたい事を言い合っている伊吹にそんな優しい声を掛けられると、ますます涙が出てきそうだ。

「私が聞いた余命よりも1年以上も長く生きてくれたんだもんね。」

私は引きつった笑顔を何とか伊吹に見せる。

「美月…、俺に無理して笑うな。」

伊吹の手が私の肩に置かれ、私の身体に自然に力が入る。

「伊吹…。」

「俺はいつでもずっとそばに居て、美月たちを守ってやるぞ。」

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