終わりは始まりか ~私達の場合~
そう…。

あれから何度も何度も麻生くんからのラインは来ていた。

つい最近も…。

私は一回も返信をした事はなかったが。

「俺は美月さんの愚痴を聞かなきゃいけないんです。」

今度は麻生くんがじろりと伊吹を見た。

「そうしないと美月さんはどんどん気持ちに余裕をなくして、自分を失くしてしまうんです。」

私は思わず両手で口を覆う。

どうして麻生くんには私の事が分ってしまうんだろう。

あの時に感じたこの感触。

「また前の表情に戻ってしまっていますよ、美月さん。」

そして私の手首をつかんで、麻生くんは私を引き寄せる。

「麻生くん!」

叫んだ私の声に、伊吹の声が重なる。

< 60 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop