終わりは始まりか ~私達の場合~
9
ちょうどうちの設計事務所の前に立った時、麻生くんが口を開いた。

「ここですか?」

「ええ。」

麻生くんは建物をじっくりと見回して、ゆっくりとうなずく。

「ただいま。」

私は裏にぐるりと回って、玄関を開ける。

そして麻生くんを促すと、リビングに入っていった。

「お帰り、美月。」

お父さんはまだ気の抜けたような表情をしている。

「さっき伊吹が来て、陽輝(はるき)を置いていってくれた。」

「そう、またお礼を言っておくわ。」

私はお父さんのそばで遊んでいる陽輝を抱き上げた。

「ただいま、陽輝。今日は偉かったわね。」

私のそんな姿に横で麻生くんが目を丸くする。

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