終わりは始まりか ~私達の場合~
だから今は仕事にがむしゃらに集中して欲しいのだ。

そういう時期が必要な事は同じ道を通って来た私が一番分かっているつもりだ。

「じゃあ、美月さんは誰に甘えるんですか?」

ああ…、麻生くんは私の一番弱い所を突いてくる。

「お父さんも居るし、陽輝の存在は励みにもなるわ。それに伊吹も…。」

私は麻生くんを諭すように、そして自分を説得するように言う。

「違うでしょう、美月さん。」

私は無言でインテリアボードに視線を落とす。

「お母さんが亡くなられたんなら猶更だ。」

私はビクッと身体を反応させる。

「もしかしたらですけど…、今日も泣いていないんじゃないですか?それとも伊吹さんの胸でも借りましたか?」

あの時と同じだ…。

私の目に涙が自然に浮かぶ。

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