勇気の魔法は恋の始まり。
プロローグ
「ねぇねぇままー。おもしろいおはなししてー。」

 その声に家計簿をつけていた手を止める。

 振り向くと、一時間以上も前に寝かしつけたはずの娘が目をこすりながら立っていた。

 金曜日の夜。

 一週間の終わりになると、疲れが溜まった娘はこうして物語などを聞きたがり、起き出してくるのだ。
 
 抱えられたままの大きなクマのぬいぐるみも、心なしか少し眠そうに見える。

「眠れないの?」

 そう聞くと娘はふるふると頭を振った。

「違うの。今日おともだちが怖いおはなししてたからね、ちょっとだけこわいの。」

 小学校に上がったばかりの娘は少し怖がりで、よくクラスの男の子から怖い話を聞かされているらしい。
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