勇気の魔法は恋の始まり。
今だに聞き慣れない関西弁も、標準語でしか話せない水帆からすれば憧れである。

「ありがとう。いくらだった?」

 杏の彼氏である北斗はくすくすと笑いながら聞く。

 その問いかけに、みんなが一斉に鞄をゴソゴソと漁り始める。

「あー、差し入れやし。要らん要らん。」

 そういって杏がにこっと笑う。

「そうだそうだー!」
 
 と言って財布を出す気が欠片もない流星を

「うるさい!その前に財布を出す振りくらいはしろ!」

 と軽くあしらって再び笑いを誘うと、北斗を振り返って話し始めた。

 こういう時の杏の笑顔は可愛い。

 これが世にいう恋する顔、なんだろう。 
 
 水帆には未だ分からない領域だった。
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