片翼の蝶

―驚いた。最初は信じられなかった。
　何かの冗談だろって思った。
　でも稲葉のクラスの人に聞いたら、
　稲葉は死んだって言ってたから、
　本当なんだって知った。
　
　でもなんでお前からの日記が届くわけ？
　代筆したやつは、なんで死んだお前の言葉を知っているわけ？
　聞きたいことは山ほどあるけど、言いたいことは一つだけ。
　
　なぁ。なんで死んじゃったんだよ。
　そんなのねぇよ。
　生きて、ちゃんと生きて俺の前に姿を現してほしかった。
　日記じゃなくて、直接お前と話がしたかった。
　見ているだけじゃなくて、ちゃんとお前と顔を合わせたかったよ。
　俺、もっとお前と話がしたかったよ。

　




ふと、真紀の眸が今以上に大きく揺れた。








―お前がそう思っていてくれたって知って、今すごく嬉しいよ。
　だから俺の気持ちも、言わせてくれ。
　俺もお前が好きだ。
　好きだ、好きだ、好きだ。
　最初はお前の文字が気になって、だんだんお前を目で追っていた。
　いつも一人で、でも真っ直ぐで。そんなお前が好きだった。
　困っているやつがいたらすぐに助けることができるお前が好きだ。
　時々、寂しそうに目を伏せるお前が好きだ。
　楽しそうに話すお前が好きだ。
　好きで、好きで、大好きで、そばにいたいと思った。
　
　お前の日記を見つけたのが俺で良かった。
　だって俺以外のやつがお前と話すなんて耐えられない。
　俺に、お前と話す機会を与えてくれて、ありがとう。
　こんな俺を、好きになってくれてありがとう。
　出来る事なら、直接聞きたかった。
　
　お前が言う通り、俺はきっとこれから
　色んな人に出会って、色んな恋をして、
　人を好きになるんだろう。
　でもそれでも、俺はきっと、お前に戻ってくる。
　やっぱりお前がいいんだって、思うだろう。
　結婚もするかもしれない。
　子どもも出来るかもしれない。
　だけど、それでも俺の一番はお前だと思う。

　約束する。俺は絶対、お前を忘れない。
　お前が忘れたって、俺が全部覚えてる。
　ちょっとクサイこと言うかもしれないけど、
　聞いて。もし、もしも生まれ変わったら俺と――