片翼の蝶



ご飯を食べ終えて、
お父さんと一緒に家を出た。


玄関を出ると駅まで一緒に並んで歩く。


お父さんは私の成績が上がって嬉しいんだと言ってくれた。


勿論、私もここまで成績が上がるとは思っていなかった。


珀の教え方がとてもいい。


どうしてこうなるかとか、
どこで私が間違えるのかとか、
問題対策を完璧にやってみせるの。


小説家としてだけでなく、
高校生としても申し分ない珀は、


生きていたらきっとすごい人になったと思う。


それくらい、珀の力が大きすぎた。


最近ではもう、勉強することが苦じゃなくなった。


それはすごい進歩だ。


お父さんと別れて、電車に揺られる。


電車の中は暖房が効いていて、
ゴトンゴトンと揺られていると油断して寝てしまいそうだった。


〈おい、茜。次で降りるぞ〉


いけない。ついウトウトしてた。


珀に声をかけられてびくりと肩を震わせる。


気付いたらアナウンスが鳴っていて、
学校の最寄り駅が見えてきた。


波にもまれながら電車を降り、
車内とは打って変わって寒い外気にあてられながら歩いた。





学校に着くと夏とは違い、
みんな席に着いて勉強していた。


参考書を広げる子、
友達同士で問題を出し合う子、
現実逃避で眠りにつく子。


それぞれが受験モードになっていた。


一部の子は就職が決まっていて余裕そうだけれど、
ほとんどが大学進学を考えている。


私も席に着いて問題集を広げた。





勉強し始めて何か月だろう。


ここまで本当によく頑張った。


受験まであと一ヶ月くらいだろうか。


とにかくS大合格のために最善を尽くさなくては。



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