片翼の蝶






商店街をとぼとぼと歩く。


夕暮れの商店街は人が多い。


主に主婦やおじいさんおばあさんが多いけれど、
高校生もちらほら見かける。


そんな中を、私は一人で歩いていた。


あれから珀の姿が見えない。


いるのかいないのかさえも分からない。


だんだん不安になってきた。


やっぱり、あの時体を貸してあげれば良かったかな。


うーんと頭を抱えていると、
後ろから誰かに肩を叩かれた。


「大志……?」


「やっぱり、高杉だったか。
 見たことあるなと思ってたんだ」


そこにいたのは赤松大志で、
大志は手に買い物袋を提げていた。


私を見て少しだけ微笑む。
私も小さく微笑んだ。


「なにしてんだ?こんなとこで」


「ちょっと、考えごとしてて」


「何か、悩みごとか?」


「うん」


私が俯くと、大志は一つ息をついて、
私の手を掴んだ。


「ならちょっと家に寄っていけ。
 大丈夫。送るから」


「えっ、ちょっと……」


強引に手を引かれて、私は大志の後をついて行った。


電車に乗って、大志の家まで向かう。


誰かと電車に乗るのは久しぶりで、
大志がいることもあって安心して乗れた。


駅に着くと、こんな町だったかなと不思議に思う。


手を引かれて歩くと、
前に来た時よりも早く大志の家に着いた。





鍵を開けて部屋に入る。


私も一緒に部屋に入ると、
中は前と変わらない、質素な空間だった。


「牛乳でいいんだよな」


「う、うん」


私は戸惑いながらも丸テーブルの前に腰を下ろした。


机には、パソコンが置かれていて、
開いているけれど電源は落ちて、画面は真っ暗だった。


その他には何もない。


特に見るものもなくて、私は視線を彷徨わせた。


「ほら」


「あ、ありがとう」


差し出された牛乳に口をつけて一口飲む。


少し砂糖の入った甘さが感じられた。


前と何一つ変わらないはずなのに、
どこか違うように感じられる。


「それで、悩みって?」


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