片翼の蝶



ぐん!と勢いよく体がはねた。


ものすごいスピードで景色が変わっていく。


何事かと思っていると、
空が私の視界に入った。


私、空を飛んでる?



下を見ると、見たこともない景色が広がっていた。


もっと見てみたいと思った時、ぐんと急降下した。


ぶつかると思った時、体勢が整えられて、
地面すれすれのところで留まる。


見知らぬ街中を飛んでいく。


人がちらほらいて、ぶつかると思ってもすり抜けていく。


まるで私が幽霊になってしまったかのように。


どんどん景色は変わっていって、
街中を抜けた辺りで、白い光が
大きく輪を作っている。


そこに向かって私は飛んで行っているようだった。


あの光に入ったら、何が起こるんだろう。


怖いというより、恐ろしかった。


もしかしたらこの光が、この世とあの世を繋ぐ
境界線なんじゃないかと思ったから。


止まって。


そう思ってもどんどん光は近づいてきて、
あっという間に私は、光の中に吸い込まれていった。






いつの間にか閉じていた目を開けると、
私は空を飛んでいなくて、


代わりに白い空間に突っ立っていた。


えっ?と思って両の手のひらを見つめる。


体が透けている。


自分の手と手も合わせられなくて、困惑する。


ここはどこ?私は、また夢を見ているの?


〈茜?〉


澄んだ声が聞こえて、びっくりして振り返る。


そこには女の子が立っていて、
私を見て目を丸くしていた。


私は、この女の子をよく知っている。


「ま、真紀……?」


〈どうして茜がここに?〉


真紀は本当に驚いたような顔をして
私に近付いてくる。


そして私に向かって手を伸ばした。


その細い手は私の体を突き抜ける。


それを見た真紀は、なるほど、と頷いた。


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