片翼の蝶
〈大地、最後のサッカーの試合で
活躍したのよ〉
「えっ?」
〈部活動として、三年生として最後の試合でね、
それはもう活躍しっぱなし!
誰も彼に追いつけなかった。
南野高校サッカー部は優勝したの〉
真紀は楽しそうに笑うと、そう話してくれた。
大地はあれから、元気でやっているんだろうか。
真紀との交換日記を終えて、
前を向いて生きていけているんだろうか。
真紀はずっと、ここから大地のことを見守っていたのかな。
〈彼、春からプロになるのよ。すごいでしょう?
やっぱりどこまでいってもサッカーが好きなんだなぁ。
あたし、サッカーのルール、覚えちゃった〉
「そうなんだ」
〈あたしの事故現場にね、毎日通ってくれてるの。
花を持って。それがとても嬉しくて、
あたしはそれだけで十分なの。
あなたに言われて最後に思いを伝えて良かった〉
最後の日記を思い出す。
真紀がそう思ってくれているなら、私も嬉しい。
代筆して良かったと、心から思える。
大地もきっと、いつまでもあの交換日記を持っているんだろうな。
そしてふとした時に思い出してくれるんだろう。
〈さてと。また大地、
あたしの事故現場に会いに来てくれてる。
行かなくちゃ。またね、茜。
絶対に珀に触っちゃダメだからね?〉
「うん」
私が頷くと、真紀はにっこり笑って消えてしまった。
一人、ポツンとその場に取り残される。
しゃがみ込んだままぼうっとしていると、
いつの間にか人がいっぱい集まっていた。
ここにいるのはみんな、
死んだ人たちなんだなとのん気にそんなことを思う。
その中に一人、見覚えのある姿を見つけた。