チャンスをもう一度
凌・・
大学の卒業
式典に出席するつもりはなかった。
望海もいないし・・・
この間・・イタリアに行ってきた。
望海は、お祖父様と楽しそうに過ごしていた。
望海の穏やかな顔に
凌は、ホッとした。
望海のお祖父様は
望海の事を心配して
もうイタリアで生活をするように
言っていたが・・・
望海は、困った顔をしていた。
望海は、何も話していない筈だが
望海をずっと可愛がってきた
お祖父様には、わかるのだろう。
望海が、« 助けて »と一言いえば
日本の大手の会社でも
一日もかからずになくなるだろう。
それだけの力を持っている。
私の父や母もお祖父様には、
力になってもらっていた。
望海は、4月1日から
大手薬品会社
アリテラス製薬の研究部門に入社が
決まっているから
それまでには帰国すると言っていた。
大学から卒業生代表挨拶の
依頼が来たが
望海は、式典に出席できない事を話すと
残念だと言われたらしい。
大学から卒業証明書を
取りに見えて欲しいと
言われたらしく
百合おば様が代理で行くことになった。
百合が行くならと
家のお母さんが一緒に行くと言い出して
三人で行くことになった。
うちのお母さんがいくとなると
目立つのは解りきっていた。
私は袴、お母さんは着物
百合おば様は、ワンピースと決まった。
百合おば様と母さんには、
望海の事を話した。
望海は、
「両親に話せてないの。」
と、言っていたから
全部が全部、凌にわかるはずはないが
大体の流れは話した。
おば様は、泣きそうな顔をしていたが
母さんは、激怒して
なだめるのに大変だった。
当日、式典に入ると
思った通りに回りはザワついた。
私だけではなく
母さんと百合おば様がそろうと
こうなる。
母さんも綺麗だけど
百合おば様は、ハーフでもあり
綺麗でエキゾチックで人の目をひく。
と、思っていると
視線を感じ······見回すと
藤本だった。
あいつ来ていたんだ。
どんな·····考えで·····
気持ちで·····
これたの·····だろう······か
あいつの顔を見たくなくて
帰ろうとすると
母さんに止められ
「望海の証書をもらって帰るのよ。」
と、言われた。