チャンスをもう一度
父親が話してくれた。

大学の卒業の式典の日から
会社に入社するまでの話を・・・
えっ、俺が望海と間違えて絢菜を抱いた?
そんな・・事が・・・
「陽翔。西本さんは、絢菜ちゃんに対して
気持ちがないお前に絢菜ちゃんを
押し付ける事はできないと
悩まれていたんだ。
お前のあの状態も絢菜ちゃんが
やったことが原因だと言われてな。
絢菜ちゃん自身も一人で産むと。」
はっと、おじさんとおばさんを見ると
辛そうな顔をしていた。
俺は、少し考えたかったので
「おじさん、おばさん、すみません。
少しだけ時間頂けませんか?」
と、頭を下げた。
おじさんは、
「本当に、どうしたら良いのか
わからなくて。
陽翔君もいきなりな話しだったからね。
考えて見てほしい。
私達は、帰るよ。
藤本さん、すみません。」
と、言っておばさんを連れて帰っていった。

俺は、頭を抱えたままソファーに
座っていると。
母親が、陽翔の背中を撫でながら
「こんなこと言っては行けないのだけど
西本さん達が日本に帰国しなければ
あなたの人生も違ったのかも知れない。
だけど、本小路さんの事・・
私やお父さんが言っても
あなたは聞き入れなかった。
そして、式典後のあなたを立ち直らせたのは、
紛れもなく絢菜ちゃん。
絢菜ちゃんのお腹の中の赤ちゃんの
父親も紛れもなく陽翔、あなたよ。」
と、言いながら
母は、泣いていた。
大切な息子には幸せになって欲しい
それは、どの親も願うこと。

母親の言ってる事は
間違っていない。
俺が望海を放置した結果が
招いた破局だ。
だが、心から愛しているのも
一生共に生きて行きたい人も
望海だけだ。
そんな、二人を見ながら
父・誠は、
「陽翔。責任をとりなさい。」
と、言った。
「・・・あな・・たっ・・」
と、和美。
「母さん・・・父さんの言ってる事が
正しいよ。」
と、言って
“望海・・・愛している・・”
と、呟いた。
その顔には、涙が流れていた。

二人は陽翔のその顔に
頭を垂れるだけだった。
それからは、バタバタと話が進み。
陽翔と絢菜は籍を入れ
マンションも広い所に移った。
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