チャンスをもう一度
陽翔は早め目に仕事を切り上げて
帰宅した。
吉本さんには、簡単に事情を話していた。
「ただいま」
玄関から声をかけると
キッチンに繋がるドアがあき
「お帰りなさい。ご飯出来てるよ。」
と、絢菜がニコニコしながら
顔をだす
晶輝も“ばあっ”と
捕まり立ちをして顔を出した。
俺は絢菜のテンションの高さに
びっくりしながら
「ああ。」
と、言い晶輝の頭を撫でて
手洗いに行き部屋着に着替えて
晶輝を抱きあげてダイニングの椅子に
腰かけた。
夕飯を食べて
晶輝をお風呂に入れてから
膝に晶輝を抱き抱えて本を読む
晶輝が眠りにつくとベッドに運んで
リビングに戻ると
ちょうど絢菜が髪を乾かし
終えたところだった。
「絢菜、座ってくれないか」
と、言うと絢菜は座りながら
ご近所の人の話や晶輝の話しを始めた。
初めは黙って聞いていた俺だが
矢継ぎ早に話す絢菜に
「絢菜っ、絢菜、大事な話なんだ。」
と、言うと
「聞きたくない。良くない話しだから。」
「すまない、そうかもしれないが
聞いてほしい。」
「嫌、絶対にいや‼️」
と、言って絢菜は
晶輝の部屋に入ってしまった。
ドア越しに何度も話しかけたが
絢菜が鍵を開けることもなく
すすり泣く声しか聞こえない。
朝も絢菜は部屋から出てくることもなく
俺は会社に行くしかなかった。
そんなことが一週間以上続き
望海の事も心配だったが
望海に会いたい自分の気持ちを
押さえこみながら
絢菜に毎日語りかけた。
絢菜は、嫌だと言って話を聞くこともなく
俺は二週間目の週末に実家に戻り
父と母に相談をした。
両親は、絢菜の気持ちも良くわかると
一緒に悩んでくれたが。
西本の両親に話を聞いてもらうことになった。
陽翔は、自分勝手な考えを二人には
丁重にお詫びをした。
お義母さんの春美さんは
泣き出してしまったが
だが、お義父さんの一彦さんは、
「陽翔君の思うようにしなさい。」
と、言ってくれた。
「あなた!それでは。」
と、お義母さんが言うと
「わかっている。
だけどすべての始まりは絢菜だ。
ある意味陽翔も巻き込まれと
いってもよい。
それに、そのお嬢さんも深く傷ついたんだ。
もう、いいんじゃないか
誰かの犠牲の上では幸せにならない。
陽翔君、今までありがとう。
晶輝は、責任持って育てるから
心配ないよ。」
「お義父さん・・・・」
「西本さん、本当にすみません。
晶輝ちゃんの父親は、間違いなく陽翔です。
その責任は、晶輝ちゃんが成人するまでは
きちんとしないと行けません。
もちろん成人してからも、
何ら変わっては
いけないと思っています。」
と、父は話してくれた。
陽翔は弁護士と内容を考えて
きちんとした書面を提示する事と
離婚の用紙を準備してもう一度
話し合いの時間を決めさせてもらい
実家に戻った。
絢菜には、もう一度話してから
ホテルにうつる話を両親にした。
絢菜が、また昔のような事をするのでは?
と懸念はあったが晶輝を可愛がっているから
それはないだろうと言うことだった。
陽翔は、その経緯を望海に
伝えたかったが、今はグッと我慢をした。
それから陽翔は、
弁護士と色々話して
取り決め事や養育費、
慰謝料の相談をして
金額や内容を決めていった。
陽翔は、今のマンションを絢菜に
渡し自分は賃貸にうつる事にした。
晶輝とは、絢菜が許すなら
面会したいことを話した。
全ての準備が整ったのは、
望海とあった日から
二ヶ月が経過していた。
この週末に西本さんの家へ
伺う事になっていた。