Je veux le protéger
『あははー。
もう、うめき声も出ない?
次が限界かなぁ?』
殴るために振り上げた拳。
パシッ……。
それは目の前の男に届く前に止められる。
『……え。』
「そこまでだ、ガキ。」
「……っ…あに…き?」
「おぉー。
ボロボロだな、理櫻。」
拳を受け止め、翠のメッシュを揺らした男は余裕そうに笑う。
『Renard……。』
Renard。
フランス語で狐という意味を持つ。
狐と呼ぶ人やRenardで呼ぶ人、色々いるが強いのは確からしい。
Dunkelheitの総長をする男だ。
「理櫻。
いくら雷光の下っ端だからって、甘くみんな。
風櫻の二の舞いになる気か?」
「……ごめん。」
「てめぇも、懲りねぇな。
風南が見逃した意味ねぇじゃん。」
『僕は見逃してくれなんて言ってないよ。
それにひとりで来るなんてあんたも甘いんじゃない?』