Je veux le protéger



「それに‥‥」


『ん?』


「お姫様は随分とうまくお隠れらしいからな。」





窓も扉も開いていないはずなのに、フワリと風が吹く。

風兄にしては珍しく、口角をあげている。

けど、それは怪しい笑みというやつで‥‥。




「まずは〝雷光のお姫様〟から何とかしようか。」




そう言う風兄はまるで新しいおもちゃを見つけたの子どものよう。

表立って楽しいこと好きの僕たちとは違って、自分のことを含めて周りのことなんて興味ない風兄だけど、本質的には僕らと兄弟らしく楽しいこと好きなんだ。

兄さんが総長であるより風兄が総長の方がいいんじゃないかと思ったりするけど、なんだかんだでしっかりしている兄さんだから、よく周りを見ている。

風兄も周りを見てるけど、興味ないことにはとことん無関心を貫くから‥‥。



今回は楽しいというより、愉しいんだろうね。



『雷光か。
僕も興味出てきたかな。』


「そうか。」




そう言うとおもむろに立って扉へと歩き出す風兄。

帰るの?なんて聞かない。

何よりも睡眠を優先するような風兄が、誰よりも早く見舞いに来てくれたんだから。

そろそろ本気で眠いだろうしね。



< 36 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop