Je veux le protéger
人って面白いの。
少し火種を置くだけで大きく燃えてくれてね?
その火種が本来、燃えるはずのないものだって気がついた時にはもう遅いの。
燃え広がって燃え広がって‥‥消せなくなるの。
そして、人は言う。
〝こんなはずじゃなかった〟って。
楽しいね。
だからやめられない。
前の時は計画が最後の最後でバレて意識不明になったやつ‥‥確か名前は豹。
そいつの仲間に邪魔された。
仲間っていっても、たったひとり。
そいつは〝Loup〟って名乗ってたなぁ。
フランス語で狼って意味らしい。
誰がつけたのかは知らないけど、実際に見た時に思った。
ぴったりだって。
狼っていうほど乱暴でもなくて、wolfっていうほど落ち着いた雰囲気でもない。
どちらも兼ねそろえた狼‥‥Loup。
黒のフードから覗く黒の髪。
その髪に入れられた赤いメッシュ。
僅かに上げられた口角とゆっくりとした足音。
たったひとりしかいない。
こっちの方が大人数。
それなのに勝てない。
そう思った。