Je veux le protéger
小さく呟くと高めの声の方が勢いよくこちらを振り向くのが気配でわかった。
けど、俺は気にせずに歩く。
俺らが狙うのは雷光じゃない。
雷光にいる〝お姫様〟ただひとり。
俺がLoupだと分かる赤いメッシュはスプレーで黒くしてある。
もちろん青のメッシュを入れている理櫻も黒くしてるし、風櫻のオレンジのメッシュも黒くさせる。
翠のメッシュの理南は場に応じて黒くしたりそのままだったりするからよく分からねぇけど。
Dunkelheitのメンバーは基本的に何色かのメッシュを入れてる。
二色だったり一色だったりもっと多かったりするけど、とりあえずメッシュを入れるってのが風櫻が決めたことだった。
俺や理櫻は乗り気ではなかったが風櫻にせがみにせがまれて赤と青のメッシュをそれぞれ入れたんだ。
なんだかんだで風櫻には甘いんだよな‥‥。
もっと言えばDunkelheitは必ずメッシュが入っているから、入ってなければ結びつくことはほとんどない。
顔が似てると指摘されたとしてもな。
『お姫様というか、行動は傲慢なお妃ってとこか。』
そう呟き、久しぶりに自分のクラスのドアを開く。
時間が早く誰もいない。
まあ、あと30分ほどで騒がしくなるだろうが。
自分の席に座り、窓の外を眺める。
いつの間にか隣に増えてる机。
これが雷光のお姫様の机なんだろうな。
席替えでもしたのかと心配したけど、まあクラスの奴らがなんか気をきかせてくれて毎回同じ席にしてくれてるから、隣が誰かとかはどうでもいい。
窓際の一番後ろってのは楽だから、誰と隣であってもこの席ならまあ多少は我慢できる。